遺言書を作成する時期

遺言書はいつ作成するべきか?

 自分が満15歳以上であって、かつ遺言書を作成する判断基準に該当していると判断したならば、作成する最良の時期は「まさに今」です。できる限り早く完成させましょう。

 大事なことから真っ先に片付ける習慣の方は良いのですが、後回しにしてしまいがちな方は遺言に限っては一念発起して早く片付けてしまうべきです。遺言書が必要なのに、作成する前に亡くなってしまっては取り返しがつかないからです。人というものはとかく昔世話になったことは忘れ易く、最後に苦労したことがあるとそのことばかりを思い出しがちです。遺言が無くて相続で酷い目に遭った遺族に不満と共に故人を思い出させるような事態は避けたいものです。

 現在は遺言書を作成する必要が無いと判断したが将来には必要になりそうだという場合、気を付けなければならないことがあります。それはいつまででも遺言書が作成ができるとは限らないことです。事故で急死したり、老齢で認知症の症状が進行して遺言能力が無くなってしまうと作成することができません。また、遺言は高度な判断を下す必要があるので病や怪我で苦しんでいるような状態で作成するのはとても難しいのです。今が平穏で健康な状態であるのならばできる限り早めに作成しておきましょう。

遺言能力を喪失する可能性

 遺言は作成時に遺言能力が必要です。なお、遺言書を作成した後に遺言能力を喪失しても、作成した遺言書の効力は失われません。

 昔に痴呆と呼ばれていた症状は現在認知症と呼称するように改められました。認知症は高齢化社会において決して珍しいものではありません。中には65歳未満で発症する若年性の認知症もあり、中年世代にとっても他人事ではありません。認知症の症状が進行するとある段階から遺言能力が無いとされてしまいます。また、事故や病で脳の機能を急に失ってしまうこともありえます。

 認知症の症状がわずかに出始めたからといっても、いきなり遺言を作成できなくなるわけではありません。一般的に認知症は徐々に症状が進行していくものですから、初期の内で認知症の症状が出ていない時を選んで遺言書を作成すればよいのです。ただ、遺言の内容に反対で、その効力を否定したい者にとっては格好の攻撃材料となってしまいます。遺言書が無効だとされてしまわないようにするための工夫をするべきです。

 では、その工夫にはどんなものがあるでしょうか。簡単なのは公正証書遺言にすることです。(公正証書遺言については別ページ自筆証書遺言と公正証書遺言で解説しておりますのでご覧下さい) 公証人が遺言者の遺言能力の有無を面談を通して確認していますので、公正証書遺言があればその効力は否定されにくいです。代理人が起案した遺言内容について「はい」と一言だけ確認の返事をするのでは効力を否定されるおそれが残りますが、遺産分割内容を公証人に対して自らが細かに説明できれば安心です。複雑な内容であればあるほど、それを説明できるならば遺言能力はより否定されにくくなります。

 どうしても自筆証書遺言を選ぶというのであれば、成年被後見人の遺言のやり方に準じて医師2人の立会いの下で遺言を作成することも考えられます。しかし、自筆証書遺言で医師2人に立会い・署名料を支払ってまで作成するよりは公正証書遺言の方を選ばれることをお勧めします。

各解説ページについてのお断り

専門用語を多用しないように気を付けていますが、どうしても使う際にはできるだけ分かり易い説明を付け加えます。また、分かり易さを優先して婉曲表現や丁寧な言い回しを使用しないことが多々ありますのでお気を悪くなさらないで下さい。