遺言書の書き方

遺言書の書き方と注意点

 自筆証書遺言の方式での書き方について説明します。自筆証書遺言は遺言者本人が紙に自ら直筆で、財産目録を含む遺言全文、日付、氏名を書いて、署名の下に押印して作成します。

 ・パソコン・ワープロでの作成や他人による代筆は不可です。字を書くことができない状態であるならば遺言は公正証書遺言(もしくは秘密証書遺言)によることになります。

 ・黒のボールペンや万年筆など消せないインクの物で書きます。墨と筆で書くのも有効です。鉛筆書きは必ず無効と限らないのですが変造される危険があるので避けましょう。昨今こすると消せるインクを使用したペンがありますが、一見普通のインクに見える分だけ鉛筆書き以上に危険なので使わないようにしましょう。

 ・日本語に限らず外国語での記入も有効です。

 ・字を崩さず丁寧に楷書で書きましょう。上手い筆跡でなくともかまいませんが、書いてある字が判別できないとか、読み間違えてしまいかねないようでは困ります。

 ・縦書き、横書きどちらでも大丈夫です。

 ・氏名は芸名や雅号での記載も有効とされていますが、できる限り戸籍通りに書きましょう。

 ・日付は遺言書を作成した年月日を書きます。年月だけで日の部分が無いとか、〜吉日などの不確定な表現は不可です。

 ・押印は三文判でもよいとされていますが、できる限り実印を押印しましょう。実印は印鑑登録にて証明する制度が有るからです。拇印・指印でも有効だとされていますが避けましょう。日本には網羅的に指紋を管理する制度が無く、その拇印・指印が遺言者本人のものであることを証明することが困難だからです。

 内容の加除訂正には厳格な方式が定められています。訂正した箇所に押印し、さらにどのように訂正したかを付記してそこにも署名しなければなりません。定めに反すると訂正部分が無かったものとして扱われてしまいます。間違ってしまった時は訂正をするより新たに書き直すことをお勧めします。

 ・削除する箇所は二重線で消すこと。塗りつぶしてはいけません。

 ・修正液、修正テープは使ってはいけません。

 遺言書の内容が複数枚にわたる場合は割印をしておきましょう。

 封緘しなければならないわけではありませんが、もし封をしたのならば併せて中身に使用したのと同じ印鑑で封印をしておくことをお勧めします。

遺言書の見本

(ごく単純な内容の遺言書の見本を後日追加予定です)

遺言書の表現の仕方

 一般的に、法定相続人に対しては「相続」、そうでない者に対しては「遺贈」と使い分けます。ただし、外国国籍の相続人で相続人であることの証明が難しいなどの特殊な場合に、法定相続人に対して「遺贈」を使用することがありえます。

 全ての財産をただ1人に相続・遺贈する場合や、財産の種類毎に相続・遺贈する人が1人の場合ならば包括的な表現を使うことができます。2人以上いる場合は分割の指定をするにあたって割合による表現か、それとも全て具体的に列挙する表現のどちらを使用するかを慎重に考えましょう。具体的に書くということは全ての相続人に情報を与えることになりますので、遺留分減殺請求(法律で認められた最低限の相続分を取り返すための訴え)をしようとしている者がいるならばその者に利することになります。

 不動産について具体的に書く場合は登記事項証明書(登記簿謄本)の記載通りに、

  ・土地は所在、地番、地目、地積

  ・建物は所在、家屋番号、種類、構造、床面積

を正確に書くようにしましょう。

遺言書に記載する価値がある事項

 もし、書き漏らした財産(例えば、遺言者が存在すら忘れていたタンス預金など)が存在するとその部分に関しては全ての相続人による遺産分割協議が必要となってしまいます。そうならないように「その他の財産条項」を入れておくことを強くお勧めします。「記載した以外の財産は全て○○に相続させる」などと書きます。

 相続・遺贈する対象者が放棄して受け取らない可能性が有る場合や、遺言者よりも先に死亡した場合に備えて記述する方が良いことがあります。予備的遺言と呼ばれます。

 葬儀費用、遺言執行費用等の負担者について記述した方が良い場合があります。実はこれらは争いになりがちな事柄の筆頭なのです。

 遺言執行者の指定をするべき場合があります。特に、法定相続人以外へ遺贈する時です。

 遺言書を後日に書き直す時は、必ず冒頭に以前に書いた遺言書を撤回する文言を入れ、全ての内容を書き直すことを強くお勧めします。以前書いた遺言書は必ず「自分で」破棄します。身内に頼んで相続人が破棄すると相続欠格事由になってしまうので気を付けて下さい。

その他の注意点など

 財産の価値や内容が大きく変動した時や、相続人が遺言者よりも先に亡くなった時には遺言書の書き直しが必要か必ず検討しましょう。遺言書に関する失敗の中で、作りっぱなしで放置していた遺言書によるものがかなりの割合を占めます。

 自筆証書遺言の場合、2通以上同じ内容で作成して別々の場所へ保管したり、信頼できる人に預けたりする手法があります。遺言書が発見されなかったり、隠匿されてしまう危険を避けるためです。

 法定相続人ではない遺贈相手がいるなら、できればその者に遺言書を一通渡しておき、しかも遺言者が亡くなったことを知ることができるようにしておきましょう。

 遺言書の内容や表現によっては相続人にとって遺言者が想像もしなかった厳しい結果となってしまうことが多々ありますので、できる限り専門家に添削してもらうことをお勧めします。

各解説ページについてのお断り

専門用語を多用しないように気を付けていますが、どうしても使う際にはできるだけ分かり易い説明を付け加えます。また、分かり易さを優先して婉曲表現や丁寧な言い回しを使用しないことが多々ありますのでお気を悪くなさらないで下さい。